孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
『財前さんとの婚約を破棄…?なにを考えているんですか!そんなことをしたら…、恭子さんからの私の評価がもっと下がってしまうんですよ……!』
使用人の藤原さんからの反応は、そんなものだった。
なにも変わっていないことが逆に清々しい。
この人に言っても無駄だと思った私は、最短ルートでお母さんに電話をかけたのだけれど。
『いい加減にして。ふざけたことばかり言っていないで、あたしが今すごく忙しくしてることは知っているでしょう。そんなくだらないことなら電話してこないで』
この人もまた、なんにも変わっていなかった。
すこしでも期待してしまった私がバカだったんだ。
海真くんと関わって、店長さんや玖未さんの温かさを感じて。
私の周りにいる人間はみんな優しいのだと、勝手に変換してしまっていた私は。
…………こんなこと、海真くんだけには言えないよ。