孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「何歳?」
「……数分後にはいなくなってる人間に、そんなこと聞く意味…ないでしょ」
「数分はある。だったらせめてその数分だけでも素敵な思い出にしない?」
ちなみにおれは17ね───と、親近感が湧いた数字に一瞬だけ、心はホッとした。
「私も……おなじ」
「え、ほんと?この街でドレス着てるのなんかキャバクラの子かホストに金つぎ込んでる子くらいしかいないから。……でもたぶんきみは、そのどちらでもない」
「……初めて、きたの」
「お。繁華街デビュー?おめでと」
とてつもなく良い街だとは言えないけれど、羨ましいとは思った。
思うように生きて、自分が今したいことを迷いなくできる人間たちが。
「ねえ。そんなとこで話すんだったら、もっとこっち来て話そーよ」
顔が見えた。
暗闇に違和感がないから、髪の毛の色は黒。
格好いいよりも、美しいというほうがしっくりくる。
けれどピアスをしていたり、ふわっと煙の匂いが香ったりと、自分とは正反対だとすぐに分かる男の子。
ふとした瞬間に出てくる少年っぽさが、単純に私は嫌いじゃないと思った。