孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




「できれば家族連れが多いとこがいいんだよね。安心な感じするから」


「ぜったい外せない条件はそれだけか」


「2LDKで独立洗面台あり、バストイレ別で日当たり良好エアコンつき。えーっとあとは……そうそうオートロック必須」



彼は本気のようだ。

本気で今のアパートから、もう少しふたりで住みやすい場所に引っ越すつもりらしい。


引っ越しというものは家を決めるまでのお金だけじゃなく荷物を運ぶトラック費用もあると、私もいろいろ調べていた。


最初は家賃2ヶ月ぶんを払ったりと、結構な額になるらしい。


無理してるんじゃないかな……。

海真くんだって一応は学校もあるし、まだ高校生だよ。



「乃々ちゃん」



そこで私に声をかけてきたのは、グラスに入っている氷をカラカラと動かす玖未さんだった。



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