孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




「最近思い詰めてるようだな。…あまり無理はしなくていい、学業を優先させるのが学生だ。ミトは別だが」


「いえ…、そうではなくて…」


「…どうした?」


「…海真くんを見ていると……すごいなって思うことばかりなんです」



ああいうふうになりたい。
でも私にはどうしてもできない。

言いたいことを言うどころか、言わせてもらえる場すら作られる前に遮断される。


彼のような乗り切り方を身につけていれば、藤原さんやお母さんに堂々と伝えることができたのかもしれない。


そう考えると、私はいったい何をクヨクヨしてるんだろうって思ってしまうときがある。



「あいつは今まで、複数のことを同時進行させて上手くやろうとしてた」



右手と左手、右足。

ぜんぶを同時に動かして、彼は彼にしか出せない音で魅了している。



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