孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「ののちゃん。今日は忙しいよ」
とっくに起きていたらしい彼に起こされた、休日の朝。
シャッ!とカーテンが開けられて、しっかり見なくとも快晴ということが分かった。
としても完全に目覚めることができずゴロンと寝返りをうつと、海真くんは「朝ごはん作っておいた」と言いながら私の頬っぺたで遊んでくる。
「寝起きのののちゃんは夜のののちゃんの次に好き」
………“の”が多いなって、自分でも思う。
「………んぅ」
「なにその声。可愛すぎてやば」
テーブルに乗っている、少し焼きすぎにも思えるトーストと。
隣のそれは……目玉焼きだろうか。
黄身と白身が混合してはひとつの作品のようになっていた。
「ののちゃん。起きよ?」
「…もうちょっと寝たい」
はっきり言って朝は苦手だ。
とくに海真くんのベッドで目覚める朝は、いっしょに起きる朝は、心地がよすぎて私を起こす気がないんだとまで思わせてくる。