孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「腹部の損傷は回復傾向にあります。ただ、強く打ったと思われる脳は……現時点ではどうとも言えません」
「……このまま…ずっと目覚めない可能性って、」
「…はい。覚悟しておいてください」
深い昏睡状態に陥り、彼はそれ以来、目を開けてはくれなかった。
声をかけても反応はない。
手を握ったとしても握り返してくれない。
人工呼吸器、人工心肺装置、血液透析装置。
彼が眠るベッドの周りには、たくさんの生命維持装置が置かれている。
「…変だよ、似合わないよ。そんな顔」
もう2度とあの笑顔が見られなくなるのだと思うと、怖い。
こんなにも静かな君は、おかしい。
少年のように笑って、たまに大人びた顔をする。
それが私が好きになった男の子だ。