孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「最終的にはののちゃんの意見がすべてだから」
私が住みたいお家に。
私が気に入ったお家に。
どんどん本格的になってゆく海真くんと、蓋をするように隠してばかりの私。
「…ありがとう」
涙までは出なくとも、泣きたくなる。
海真くんを見ているとそんな気持ちになることばかりだった。
素直にありがとうを伝えたいのに、心には小さな不安もある。
完全に頼りたいのに、そうではダメだと言っている私もいる。
ここで私のお母さんのことや婚約者のことをまた持ちかけたところで、彼を疲れさせてしまうだけだ。
「ええっと……、お父様とお母様、で……?」
「はい、父です」
「母で~す。母ですってか、この人の奥さんで~す!」
「その息子でーす」
……………ぜったい違う。
さすがに無理があるんじゃないかな、それは。
不動産屋さん、すっごい疑ってる。
まだ未成年でもあり高校生な私たちがお家を借りることはできないわけではないが、そこにはどうにも保護者の同意が必要らしく。