孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




「…高校生が払える額じゃない……」



思わずつぶやいてしまっていた。


都内だから仕方ないとしても家賃だけで10万を超すだなんて、じゃあ生活費はどうなるの?

電気にガスに水道、そういった光熱費だってタダじゃないでしょう…?


不動産屋さんだって本当は思っているはずだ。


ぜったいおかしいよ…、こんなの。



「お金のことなら平気。ほらピアノって誰にでもできるもんじゃないし、おれの場合はバイトってより仕事って感じだしさ。ああ、労働基準法もガン無視してるから」


「おい。だからおまえは実質2時間なんだよ」


「最近のおれは?」


「…………5時間くらいか」


「嘘じゃんお父さん。ねえお父さん。…おれだってちゃんと考えてるよ、ののちゃん」



ごめんね海真くん。

私、ここのお家にあなたと生活している未来がまったくと言っていいほど見えないの。


さっきのマンションもそうだった。


リアルな生活感がない。
私が欲しいものは、これじゃない。



< 206 / 335 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop