孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「もしあんまイメージ湧かなかったら、おれ他のとこまた探すし。今日は気楽に見ればいーんだよ。ののちゃん」
「……うん」
今のアパートのほうがいい。
きっとここに住んだら海真くんが変わってしまうような気がする。
そして次が最後の物件だ。
また似たようなマンションなんだろうな…と思っていると、車のなか、海真くんが複雑そうに口を開いた。
「つぎ、なんだけどさ……。ちょっと今までと雰囲気まったく違うから、驚かせちゃうかも」
「ちがうって?」
聞き返したのは、玖未さん。
海真くんはどこか瞳を伏せながら答えた。
「オートロックじゃないんだよね。んで、マンションでもなくてアパート」
「え、あんなに必須条件って言ってたのに?」
「そう。…正直いうとさっきの2コが本候補みたいなものだった。これは……おまけ」