孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
おまけ……。
私としてはどんな物件なんだろうと、初めて気になった。
もしかすると私がずっと浮かない顔をしていたから、本当は予定していなかったけれど急遽見てみることにしたのかもしれない。
つい先ほど、担当してくれている不動産屋さんに何かを小声で伝えている海真くんの姿があった。
「……普通のお家みたい」
「今までが立派なマンションだったからね、そうなるわよねー」
玖未さんにはネガティブに捉えられてしまったかもしれないけれど、私からすれば良い意味で言ったつもりだった。
おまけである3件目のお家を前にしたとき、私は直感で“ここいいな”と思った。
2階建てのアパート、外観はよくある一戸建て風に造られていて、どこか親しみがある。
「ここさ、おれが昔…家族と住んでた家に外装がちょっと似てて」
「…え…」
「…本当の家族のことね」