孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
彼にとってもスルーできない物件となった、大きな理由。
立ちすくんで見上げている海真くんの左手を、すかさず私はそっと包み込んでいた。
「6歳までの記憶だから確かじゃないかもだけど。…似てんだよね、たぶん」
「…ううん。きっと似てるの。絶対そうなの」
「……うん」
玄関は小さい。
シューズボックスもそこまで大きいわけじゃなく、すぐにいっぱいになってしまいそうだ。
ただリビングまでつづく廊下が、とても温かく感じた。
「築年数は少し経っていますが、お隣さんの家族も賑やかでとても良い方たちですよ」
「…家賃のほうは、」
「家賃は管理費込みで7万円です。駅からは少し歩きますがコンビニやスーパーだけじゃなく病院も徒歩圏内にありますので、非常に便利だと思います」
やっと自分が住みたいお家について真剣に考えられそうな気がする。