孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




「とりあえずみんなでご飯!お昼たべてないもんね~。よっしファミレスでも行くかっ」


「おれ包み焼きハンバーグ~」


「…だれが出すんだよ」


「休日のお父さんってほんと大変だよねゴチでーす。ののちゃん、ファミレスだって。まだおれたちも一緒に行ってないとこ」



ありがとう海真くん。

それしか言えないくらい、海真くんの優しさと温かさに心臓が苦しい。



「ののちゃん。あの家は、おれたちふたりの家になるんだよ」


「…うん」



そっと涙を拭って、大人ふたりが背中を向けているうちにキスをされる。


ずっと私はこういう幸せが欲しかったんだ。


戻りたくない。

私自身が戻れない気持ちにまでなっちゃっている。



「っ………?」



見えてしまった気がした。

一瞬、ほんの一瞬。


遠くの物陰から、私たちを見つめる女性の姿を。


その女性が首に巻いていたスカーフがね、私のお母さんがよく身に付けているものに似ていたの。



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