孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
それだけは私のことで決めさせたくはないことだよ。
「2コ目は、今までどおりを続ける。ただバイトメインになるだろうけど、学校もちゃんと卒業するつもり」
それがいい。
生活が苦しかったなら私が支える。
私もじつは学校、やめていいって思ってるんだ。
ううん、あんな通いたくもない学校に通っている私のほうが、やめるべき。
海真くんさえいるなら、それでいいの。
「んで3コ目ね。……プロのピアニスト、目指そうと思って」
「…スカウト、受けてたもんな」
「あれ。見られちゃってたか」
そこで最初に沈黙を破ったのは店長さん。
私もたまに目にしていた。
コソッと耳打ちをするように、彼に名刺を渡すお客さんを。
いつも爽やかに受け流していたから、海真くんにその気はないんだとばかり思っていた。