孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「で、あんたはどうしたいの?結局決めるのは海真自身なんだから。どれがいちばん今のところ有力?」
「おれピアニストなんか興味ない。たぶん仕事にしたら、純粋に楽しめなくなるだろうし」
「じゃあ、学校やめるか今を続けるかの2択───」
「でもケタ違いなんだよ。稼げる額」
「……………」
それが海真くんから出た言葉だとは思えなくて、私は一瞬だけ息が止まった。
お金で愛は買えないことを教えてくれた彼が。
お金以上の価値あるものを、たくさん私に与えてくれた彼が。
「ほんと最低だけど……おれだって結局は金なんだなって、最悪だ。吐き気がする」
あんなにも私のために動いてくれて、あんなにも私のことだけを考えてくれて。
無理はしてないと、我慢もしていないと。
私もそれは本気なんだと感じたし、すごく嬉しかった。