孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
どうして私に話してくれなかったの、と。
いちばんは私に相談してくれなかったのと、まずはそこだった。
「でもさ、実際はたぶん金さえあれば年齢的な信用なんて補えるんだよ。…わかるだろ、大人なら」
「……………」
「金がないと良い部屋は選べない。金がないと安全な家に住めない。金がないと……ののちゃんを守れない」
いつかに彼は言っていた。
物理的なことでしか解決できない世界もある───と。
「金がないと、好きな女の子がおれといっしょに暮らしたいって言ってくれた家に住まわせてやることも………できないんだよ」
だから学校をやめてまで、自分の人生も道もなげうってまで。
ただ、私だけのために。
「また振り出しだ。でも…似たようなとこ、探すつもり」
「…それ、乃々ちゃんは知ってるの」
「……言えないって。こんなこと」
だって情けないだろ───と、小さく小さく聞こえた。
情けなくなんかないよ。
情けないって、なに…?
どうしてまだ、あなたは私をお嬢様として見てしまうの。