孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




「あの候補のなかで最低賃金だった家にすら…、蹴られてんだよおれ」


「…海真。言いたいことはちゃんと言い合えと、俺は言ったはずだぞ」



「いつのまにか名前呼びになったんだ」と、普段なら嬉しがるはずなのにそうでもない。



「これは言いたいってより、言いたくないこと。おれにだってプライド…あんの」



プライドをそこまで持っていないのが海真くんだったはずでしょう。

私はそんな海真くんが好きだったんだよ。


どこで、どうしてそんなプライドを持ってしまったの。


………私のせいなのかな。

海真くんを変えてしまっているのは、私……?



「ののちゃん、最近ずっと……すごい家庭的な料理ばっか作ってくれんだよね」



せっかくドアにかけた手が、また止まった。



「家庭的な料理って、カレーとか?」


「…そう。しかも市販で売ってる安い固形ルーで作んの」


「まあ……あたしらにとってはそれが当たり前だからアレだけど」


「もちろん嬉しいよ。すげえ美味いし。けど、あの子の得意料理はイタリアンなんだよ。オリーブオイル使ったりするやつ」



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