孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
それまで考えたことなんかなかったけれど、オリーブオイルはすごく高いの。
普通のサラダ油のほうが安くて、私が得意とする料理はどれも材料費がかかる。
だから安くて量がたくさん作れるものをって、確かに最近はずっとそうだった。
そういえばおかず、1品になってたね。
「そういう料理のほうがおれが喜ぶからってののちゃん言うけど……、できるならおれだって作りたい料理を出してほしいし、出させてやりたいよ」
ちがうよ、ちがう。
そうじゃないんだよ。
私は海真くんといっしょに食べられるならなんだっていいの。
むしろ海真くんと暮らしてから家庭的な料理のほうが温かいなって思ったし、そういうものを私があなたに作ってあげたいだけなんだよ。
「わかる?おれ、…ののちゃんに、オジョーサマに気ぃつかわせちゃってんの。無理やりにも庶民にさせちゃってんだよ」
唇が、ふるえた。
そんなふうに思いながらいつも私が作るご飯を食べてくれていたのって、すごくすごく悲しかったから。
間違ってるよ、海真くん。
あなたに気をつかわせてしまっているのが私なんだ。