孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「っ、」
ベルを響かせてまで強めにドアを引いた。
全員が同じ顔をして私に注目してくる。
ばつが悪そうで、必死に誤魔化しを考えている顔だ。
「びっ、くりしたー。ののちゃん、夜はひとりで出歩かない約束じゃん」
「…雨、降ってたから。傘持ってないと思って…」
「ああ、そっか。ありがと。でもほんと危ないから次はダメ」
言えないことがあるのは私も同じだ。
私だってお互い様。
でも、これで迷っていた気持ちは決まったかもしれない。
アメリカに行ってお母さんに話してくること、もう少しあとにしよう───って。
「海真くん、お家のこと…なんだけどね」
「順調順調。だからののちゃんは揃えたい家具とか、決めといて」
「……うん」
どうして嘘をつくの、とは言うつもりはない。
それはつくべき嘘として海真くんは言っているだろうから、咎(とが)めないよ。
その気持ちは私だって同じだから。