孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「あのね…、やっぱり冬休み、」
「…冬休み?」
「…うん。アメリカに行くの、もう少し先延ばし───」
CLOSEDとなっていたはずのドアが、カランカランと開いた。
治安があまり良くないこの街でも、営業が終わっているお店に無理やり入ってくるようなマナーのないお客さんは滅多にいない。
私以外の3人は、新たに現れた人物を見ても心当たりがないようだった。
「……どう……して…」
けれど、私だけは。
「やっと見つけた」という声ひとつが、すべてを物語っていた。
「すみませんが、今日はもう店は閉まっているんです」
「ええ、別に客として来ているわけじゃないの」
スカーフを巻いた女と、気まずそうに地面ばかりを見ている使用人。
そうだよね、見られないよね。
私との約束を破ったのだから。
────藤原さん。