孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




「あたしは家を飛び出して好き放題している、そんな不良娘を連れ戻しにきたのよ」



間違いなく、彼女はアメリカにいるはずの母親だった。

聞いた途端に海真くんも玖未さんも、店長さんまでもが驚きながらも眉を寄せる。



「藤原さん…っ、どうして…!」


「申し訳ございません乃々さん…、ですがこのままではっ、私の生活もかかっているんです……!」



なんにも謝罪になっていないよ。

つまり遠坂の名前を今後も自分のもののように使うために、お母さんに私を売ったのだと。



「ほら、帰るわよ」


「………帰らない」


「そんなワガママが通ると思っているの?学校でも成績が下がっているんですって?習い事も投げ出して、婚約者にも無礼な態度ばかりを取って。……どれだけ周りを振り回せば気が済むつもりなのよ」



今まで1度も連絡すらくれなかったくせに、今さら母親気取りなんかやめて。

せめて気取るなら、もっとマシなことを言ってよ。



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