孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「どこに…、逃げるの……?」
「…わかんない。できれば国外がいいけど、とりあえずはここからいちばん遠い国内かな」
「………無計画すぎるよ、それは」
おれじゃあ不安?
もしかして今さら怖くなった?
拐っていいって言ったの、ののちゃんじゃん。
それともおれになんかできるわけないって、最初からそう思ってた?
「おれ、今までだってぜんぶ計画なんか立ててないけど」
「………、」
「ののちゃんをここに連れてきたのだって、ののちゃんを好きになったのだって。計画なわけないだろ」
玖未さんの祖母が田舎町で暮らしているらしい。
森と山に囲まれて、たまに猿や熊が出ると言われているほどの田舎だ。
そこまで行けば、もしかしたら追っては来られないかもしれない。
頼れるツテをぜんぶ使ってまで、おれはこの子と生きるつもりだ。