孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




「ののちゃん」


「…まって、今日は……気分じゃないの、」


「気分にさせる」



心、少しずつ離れていってるでしょ。

おれのことが嫌いなわけじゃないのは分かる。


けどそれが家族との縁もぜんぶ切ってまでかって聞かれたら、迷うくらいには。



「んん…っ!ぁ…っ」


「ののちゃん、…乃々」



だったらせめてカラダだけでも、とか。
おれほんと最低だよ。

もしののちゃんがあんな婚約者のもとに戻る道を今も考えてんなら、おれどーしたらいい?


おれ、また……ひとりになんの。



「…ひとりにしないでよ、ののちゃん」


「……海真、くん」


「ののちゃんだよ。ひとりに慣れてたおれを…こんなふうにしたの」



だから責任とって。
ここで捨てるとか最低だよ。

だっておれ、料理できないし。


フライパンとか鍋もそうだし、電気ケトルと冷蔵庫はもとからあったけど、あんなでっかいオーブンレンジなんか使わないもんおれ。



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