孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




「かいまくん、…ッ、海真くん…っ」


「っ、…はっ、……もっと呼べって」



学校での成績落ちてるって、なんでおれに言わないの。

そんなのまったく知らなかったよ。


ほとんどバーの手伝いしてるけどさ、そういえばののちゃんいつ勉強してんの。


我慢して無理してるのはののちゃんだろ。

おれってさ、おれって、そんなに頼りない……?



「おれのこと好き?」


「…っ、……だいすき……」


「おれの家族に…、なってくれるんでしょ…?」


「……なり、たい…っ」



ならもう、逃げよう。


いーよ、
捜索届が出されて警察に追われたって。

ニュースになって全国民におれの顔が指名手配されたって。


ここで離ればなれになって失うくらいなら、どこまでだって拐うよ君のこと。


わりとタフなんだ。
身体だけは丈夫なんだ、おれ。



< 235 / 335 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop