孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




「は…ッ、はあ……!店長!!!」


「どうした、何事なんだよ」


「ののちゃんは!?来てる……!?」


「…来てない、が」


「…………いなくなった………、帰って、こない……」



逃げる計画は、実行できそうになかった。

ののちゃんが不安がったとかではなく、単純に彼女が「ここにいたい」と言ったのだ。


おれとふたりで暮らすアパートにずっといたい、と。


だったらおれはこのセキュリティもなにもない城でののちゃんを守るしかない。


そう思ってたってのに────ある日の朝、ののちゃんの姿は消えていた。



「電話は」


「繋がるわけないじゃん。着拒されてんのかってくらい出ないよ」


「…あの母親から何かあったのか」


「おれのほうにはない。ののちゃんもそんなこと…、一言も言ってなかった」



すぐに店長は店を閉めた。


ビルの屋上だって考えられるところぜんぶ見てきた。

やめてよ、そんなことすんの。

そしたらたぶん、おれだって近いうち追うことになるよ。


だってもう、この世界に未練とかなくなるから。



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