孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「……海真」
そっと抱きしめてくれた玖未さんの腕は、姉ちゃんによく似ていた。
一筋の涙がどうしたって流れてしまったから、おばさんなりに慰めてくれてるんだろう。
「あんたはよくやってる。本当に……よくやってるよ」
「っ…、どんなに……、どんなにおれが離さなかったとしても…、ののちゃんが自分の手首切ってまでも離れたらさ…っ、意味ないんだよなあ……っ」
「そこには必ず理由がある。…あの子があんたを捨てるわけないっつーの」
「……でもおれ………ひとりじゃん…っ」
いま、ひとりじゃん。
ずっと待ってたけど帰ってこないじゃん。
やっぱりあんな狭いアパートは嫌?
居住スペースなくなる覚悟でドレッサーくらいは買ってあげるべきだった?
シャンプー、わりと高いの揃えてたけど。
やっぱオジョーサマが普段使ってるのとは比べ物にならないか。