孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




下手くそ。
つくなら、もっと上手につきなよ。

最後、震えてんじゃん。



「おれとの生活、そんな苦痛だった?」


「ええ、苦痛よ」


「…100円ショップ、あんなに楽しそうにしてたのは嘘?」


「…ええ。だってああでもしないと、あなたの顔を立てられないと思って」



そんな器用な人間じゃないだろ、ののちゃんは。

あれを嘘とか言ったら、あの場所にいた全員を騙してるってことにもなるし。


魔女すぎるよ、それ。



「ハンバーガー、美味しくなかった?ポテトも」


「……あんっなにも美味しくない残飯みたいなものを口にしたの、初めてだったわ」


「ああ…、確かに。食べ物に思えないって言ってたもんな」


「………、」



なにその違和感だらけのオジョーサマ口調。

言葉だけじゃなく目も口も手も震えてんなら、今すぐおれのとこに飛び込んできなよ。


許すよ、ぜんぶ。


さすがにちょっと腹立つけど、でもそれを許せてのおれの愛ってやつだ。

プライドなんか、やっぱりないからさ。



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