孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
ようやく今になってだった。
私は何をしているんだろうって、後悔に似た感情が襲ってきたのは。
あなたが悪いわけじゃない、
あなたには感謝している。
けれど帰らなくちゃ、帰らなくちゃ。
口が渇いてしまってジュースに手を伸ばすが、そこでも引っ込めてしまう。
「大丈夫だって。毒も睡眠薬もアルコールも入ってない。今日ここに来る前にスーパーで買ってきた激安オレンジジュースだから」
こういうことはしょっちゅうなのだと。
そのほとんどが自腹なわけだから、店長さんに文句を言いたいらしい。
「あの…、スマホとかって、貸してはもらえませんか」
「スマホ?いーけど。ああ…、電話かける?」
小さくうなずく。
私が座る椅子によく分からない体勢で寄りかかってくるのなら、向かい側にでも座ればいいのに…なんて。
すごくたくさん泣いてしまった。
初めて会った彼の腕のなかで、いっぱい。