孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




「…かわいー……」


「……私のこと、すき?」


「………だいすき…」


「…いつかお嫁さんに…、してくれる……?」


「…するよ、……ぜったい、する」


「っ…、私のこと……忘れない…?」


「…………わすれ…ない…」



ぜったい?と、涙声を隠しながら聞いた。

そうして海真くんはハッキリと言ったんだ。



ぜったい忘れない───って。



あなたの隣で笑っていた私が本物だよ、海真くん。

ぜんぶのものが初めてで、ぜんぶのものに驚いていた私が、本物。



「───乃々。アッサムティーでいいかい」


「……ありがとうございます。ちょうど飲みたかったの」


「きみの好みは熟知しているんだよ」



こんなふうに言えば満足そうにする彼もまた、何ひとつ変わっていなくて安心さえもする。

嫌いを通り越して、なんとも思っていない境地にまで来た。


心はいっさい燃えない、動かされない。



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