孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
お願い、店長さんと玖未さん。
身勝手なことをして本当にごめんなさい。
どうか海真くんのそばにずっといてあげてください。
私のぶんまで、ずっとずっと。
「ほとんどはバーのほうにいるようです。変わらずピアノを弾いていました」
それから数日間に渡って見に行ってくれたらしく、私は藤原さんからの報告を受けた。
ホッとするなんて最低だけれど、ただただ安心した。
とくに痩せているようには見えなかったこと、店長さんや玖未さんも変わらずそばにいてくれていること。
聞いただけで涙があふれた。
「ただ……ふたつだけ」
どんなことだとしても、彼女から話される彼の様子が私が感じられるすべてだ。
視線を落とす藤原さんは、切なそうにする。
あなたがその顔をするのはおかしいと思いながらも、私は言葉を待った。