孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




しわくちゃになって、おばあさんになって、そこで財前 一朗太といっしょに見る景色なんか。

なんにも美しくない。


そしてクリスマスは、財前さんが予定していた上海の高級中華もホテルも急遽キャンセルということになった。



「まさか高熱が出てしまうだなんて。さすがに次こそはそうならないようにしなければいけない」


「…そうですね」



これは嘘ではなく、本当のことだった。

ただ前日まで行きたくないとひとりで泣いていて、きっと神様が気まぐれのように与えてくれた奇跡だったのだと私は思っていたりもする。


40度近い高熱が出て、私はすぐに病院へと運ばれた。


「最低でも3日は安静にしてください」とのことで安静にしていたら、クリスマスなんてものは過ぎていたのだ。



「チッ。なんだ事故か…?ずいぶんと混んでいるじゃないか」



この男の運転も、大嫌い。


目の前の車が遅いだとか、信号が長いだとか短いだとか。

今もただ渋滞にはまっただけで舌打ちだ。


私は茫然と窓の外を見る。



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