孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「っ、財前さん、私……用事、」
「え?」
「行かなきゃ…っ、行かなきゃ…!」
「ちょっ!なにをする気なんだ乃々…!!」
シートベルトを外して、内側からドアの鍵を開けた私を止めてくる財前さん。
馬鹿なことをしているとは分かっている。
ありえないことをして、こればかりは交通ルールも黙っていない。
「もしや……、またあの男のもとへ行くつもりか…!?君にとってのいちばんは僕なんじゃないのか…!どうしてまた狂ってしまったんだよ乃々……!」
「………おねがい離して、」
「いいや離さないッ!なにが君をそんなに狂わせた…!?あの男のことはもう忘れろと言ったはずだろう!!」
「事故に…、事故に遭っているかもしれないの…っ、トラックに轢かれて…っ!」
「だったらそれはそれでいいじゃないか……!!」
それでいい……?
いいわけがない、なにを言っているの。