孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
どうして私はこんな男と車に乗って、楽しくもない行きたくもない計画ばかりを立てて。
ここで事故に遭えばいいのに……なんて。
そんなことばかりを思って。
「いいわけ…っ、ない……!!」
「乃々…!!どうして君はっ、どうしてどうしてどうしてぇ……ッッ!!クソ…っ、クソクソ…ッ、クソォッッ!!!」
プーーーーッ!!!と、怒りを爆発させたクラクションを財前さんが鳴らせた。
ひとりで向こうの世界に行こうとしているのかもしれない。
トラックとの接触で即死だって。
自ら飛び出してきた、自殺の可能性も考えて、だなんて。
そんなの………嫌だよ海真くん。
「わたしは………あなたのことは今後も好きにはならない」
「─────………」
「なにをしてもあなたと海真くんを重ねます。いつどんなときだって、海真くんだったらって考える。私は彼を、海真くんを……」
愛しているから────。
ここまで財前 一朗太の目を見て気持ちを伝えたことなど、初めてだった。