孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




何度も何度もうなずく。

勝手に勘違いしてここまで来て馬鹿だなあと、海真くんは震える声で笑っていた。



「おれの生命力ってね、ゴキブリ以上なんだよ。こんな惨めになっても……生きてるでしょ」



惨めじゃない。
惨めなんかじゃないの。

けれど訂正したってぜんぶ私のせいなのだから、すべて受け入れる。



「これ…っ、いきたい……っ、遊園地っ、行きたい……!ゆめの、くに…っ」



制服のポケットに入っていた、唯一。

ぐしゃぐしゃになっちゃったけれど、いつもいつも持ち歩いていたの。


遊園地のチケットと、ホテルの宿泊券。



「……行けないよ、もう」


「っ…、どうして…っ」


「だってこれ、日付指定されてんだもん。去年の12月24日限定なんだ」



クリスマスしかサンタさんが来ないように。

過ぎてしまったならもう、終わりなんだ。


やるせない思いを握りしめて、私は玄関の前で何度も何度も謝った。



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