孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
本当であればやっぱり、審査は通っていたらしい。
大家さんも快く了承してくれていて、私たちに会えるのを楽しみにしてくれていて、けれどお母さんがお金ですべて取り消させた。
「ならもう、ぜんぶお母さんのせいにしよう。……許すよ。今ここに…ののちゃんがいるから」
「っ…、海真くんっ、海真くん……っ」
「…でもあれは食らったよ。ごめん、美味しくもないご飯で。あったかくもない薄い布団で……やっすいシャンプーで」
「ちがう…っ!!ちがう、……ごめん……なさい……」
ぜんぶ反対だった。
本心と正反対のことを言わなくちゃって、自分を殺していた。
そうでもしないと財前 一朗太を付け上がらせることができないと思ったから。
あのままずっと海真くんが私の実家に来てしまうのだって、またお母さんにバレたらどうなるか分からないと思ったの。
「でも…我慢ばっかりさせちゃってたから…、私のせいで海真くんを悩ませてばっかりだったから…っ、これがいちばんいいんだって……っ」
「…おれと離れることがいちばんいいって?」