孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
うなずいて答えるしかできなかった。
あの日のバーで店長さんと玖未さんと3人で話しているところを見てしまったら、やっぱり私じゃダメなのかなって思ってしまった。
合わせているつもりはないのにそう見られて、逆に海真くんを私が追い詰めてしまっていたから。
「ふざけんなって」
「だってっ、聞いちゃったから…っ、学校やめるとか、プロのピアニストとかっ」
「そんなんどーだっていい。ねえおれ、この2ヶ月間、味がしないご飯食べつづけてたの知ってる?」
よかった、ちゃんとご飯は食べていた。
まず最初にそう思ってしまった私。
「ピアノ弾いたって涙ばっか流れてさ。なんでそうなってたか…知ってる?」
「…私が……、最低なこと、したから…」
「そんなことじゃない。……ののちゃんがおれの隣にいないからだよ」
ぐいっと、頬っぺたが優しくつねられる。
これが海真くんなりの仕返しなんだと思ったら、後悔と罪悪感でどうにかなりそうだった。