孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「ひどいでしょ。自分でもグレてんなって思うよ。…ののちゃんがいないと、こうなんのおれって」
「……ひどい…」
「…ふっ。奥さんが出ていっちゃって部屋が散らかる旦那と同じだよ」
そんな言葉に、ぶわりと視界が見えなくなるくらい浮かび上がった。
プチンと、制服のリボンを自ら外す。
変わらない部屋。
私が使っていた箸やコップも、ちゃんと捨てずに揃えてあった。
私が今日みたいにいつ帰ってきてもいいように、ずっと待っててくれていたんだ。
「あの男のしつこさは十分よく分かったから。…ののちゃんはまた戻らなくちゃダメだと思う」
「いや…っ、戻りたくない…っ」
「…うん。だからさ、離婚してからおいでよ」
「………り、こん…?」
「ののちゃんが何歳になったとしても、おばあちゃんになったとしても。おれここでずっと待ってるよ。…そいつとの結婚生活に飽きて、そいつもののちゃんに飽きて。そしたら………いつでもおれのとこに来ればいい」