孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
綺麗で悲しいダイヤモンド
「は……っ、…っ、海真くん…っ、かいまくん……!はあ…ッ、───う……ッ!」
何回目だろう、転んだのは。
途中のゴミ箱にぶつかって人にぶつかって罵声を浴びて、雨はいっそう強さを増すばかりで。
『ちょっと店長からお使い頼まれててさ。暗くなる前には帰ってくるから、待ってて』
いっしょに行く、なんて言った私に。
海真くんは今日だけはダメと言って大人っぽく微笑みながら、キスをひとつしてくれた。
明日は私の18歳になる誕生日。
なんとなくそうなんだろうなって気づいていたけれど、気づかないふりをしたんだ。
「イッテェな!!ちゃんと前みて歩けよ……!!」
前なんか見えない。
なんにも、なんにも見えないんだよ。
いろんなサイレンがあまり離れていない場所から聞こえて、ずいぶん遅かったから何度も電話とメッセージをしたの。
やっと電話が来たと思ったら………それは玖未さんからだった。