孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




「不都合なければご予算のほうをお教えいただけましたら、そちらにお合いしたものを揃えさせていただくことなども可能でございます」


「……いや、これ……いいなって思います」



最初に見つけた35万。
値段だけで見るとかなり高い。

おれにとっては高い。


ののちゃんからすれば安いのかもしれないけど、でもここだけはおれだって背伸びをしたかった。



「よろしければ1度、お手に取られてみてはいかがでしょうか?」


「…ああ、じゃあ、お願いします」


「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」



明日はののちゃんの誕生日。

18歳になる記念すべき日は、これだと前々から決めていた。


と言っても結局まだ高校生だし、おれは7月が誕生日だから籍を入れるというわけではないが、先に指輪だけでも渡しておくっていうのもアリかもなって。


今日の予算だって、おれが稼いで貯めていたもの。

さすがに店長や玖未さんから借りるわけがない。



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