孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




「…色、変わるんですね。青色にも見える」


「はい。とくに暗い場所ですと、いっそうアイスブルー色になるところも人気のひとつなんですよ」


「…ほんとだ。綺麗ですね」


「ええ。ちなみに本日在庫は揃っておりますので、お相手様のサイズがあればその場でお渡しすることも可能でございます」



やっぱこれ、いいな。

おれの一目惚れみたいなものだったけど、案外そういうのがいいって言うじゃん。


ののちゃんの薬指のサイズもばっちりコッソリ採寸済みだ。


リングの部分が若干ねじれている。
そこもおれは好きだと思った。



「………やっぱり女の子って…、こういう形に残るものが好きなのかな」



これが第一候補だと心のなかで決めながら、店員さんに指輪を返す。



「私は販売している側ですので、こんなことを言うのは少々マナー違反かもしれませんが…」



するとおれのつぶやきを拾ってくれた店員さんは、今まで以上に声を小さくして続けた。



「どんなに高価な指輪だとしても、そうではない指輪だとしても。本当に愛している男性に貰えるものなら、実際はなんでもいいんです。
ただ……、その指輪をいちばん最初に見せられた思い出だけは、きっと女性にとって一生忘れられないものになるのではないかな…と」



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