孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「─────……は……ッ………」
そして勢いよく1人が向かってきては、何かがおれの身体を貫いてきた。
とてつもない痛みだけじゃなく、意識がすぐに消えそうになる。
引き裂かれそうな痛みは、刃物が刺さったままの腹部をどんどん真っ赤に染めていった。
「カネがモノ言う世界…なんだよな」
そんなにも震えるくらいなら……やるなよこんなこと。
おれは歩けるだけ歩いた。
もうダメだと思いながらも、ののちゃんが待ってくれている家へ。
息ができない。
諦めたら、もうそこで終わる。
視界が遮られてゆく。
どんどん狭まって、見えなくなってゆく。
「……ヤベェ…、やっちまったよ…、おい、どうする……?」
「どうする、じゃねえよ。金が必要だったんだから仕方ねえだろ…、……それにザイゼンさんからの報酬だ。高くつく」
そんな男たちの会話だけを聞いて。
通行人が滅多に見えない暗ったくて小さな架道橋のトンネルは、すぐに静寂に変わった。