孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




大丈夫、おれってタフで生命力だけは強いから。

きみを置いてはいかない。


あの日屋上で出会って救われたのは、きっとおれもなんだ。


おれもあの日、いっそ死んだほうがラクなのかなって考えてた。




「…………の…………の─────………」




ごめん。
最悪な形で渡すことになるかもしれない。

でもある意味一生忘れないよなって思ったら、それもそれでいーのかな。


金なんか超えて、金なんか相手にもならない愛、おれは証明してみせるよ。



「おい…っ、おまえっ、シュウちゃんの店の……!!大丈夫か!?おい!!しっかりしろ……っ!!」



もしかするともうおれは、この世界で目を覚ますことはできないかもしれない。


はたまた今日までのおれは消えて、ののちゃんを前にして「だれですか」とか言うおれになるかもしれない。


たとえおれが、この先。
どんな姿になってしまったとしても。


君さえ隣にいてくれるなら。

おれの手を握って、名前を呼んでくれるなら。



どんなに時間がかかったとしても、いつかぜったいまたいっしょに笑いあえるから。



ぜったい大丈夫だから。


信じて、おれを─────。



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