孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「……わかりました。ありがとうございました。また採用の場合のみ1週間以内にご連絡させていただきます」
「えっ?もう終わりですか…?」
「はい。十分でした」
「あっ、ありがとう…ございました」
なにか良からぬものを感じ取ると早く切り上げる、店長の癖が出た。
面接が終わると、夜の仕込みをしていた私に「却下だな」とすぐに伝えられる。
「うそ、不採用にするの?時間帯もちょうど良かったし、ハキハキしてていい感じに見えたけど……」
「うちの看板娘目当て、ってのがなかったらな」
「………えっ」
「いつか殴られるのは俺だ。もしつぎ客で来たときは既婚って言っとけ」
意味を理解してから微笑んだ私は、カウンター端に飾ってあるひとつの写真を見つめる。
4人で写った1枚は、この場所でいつかに撮ったものだ。
腕を組む店長、反対側でピースサインをする玖未さん。
そして真ん中には私がいて、隣に並んだ彼が繋いだ手を見せびらかすように笑っている。