孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「あっ!もうこんな時間…!店長ごめんっ、仕込みはほとんど終わってるけど…!学校いってくるね……!」
エプロンを外して荷物を持って出ようとしたところで「乃々、ちょっと待て」と。
足踏みをする私は、時間に追われながらも店長からの何かを待つ。
「これ、食ってから行け」
差し出されたカルボナーラ。
たしか昼間のカフェ営業で間違えて作ってしまったものだった気がする。
「ええ、時間ないよっ」
「ちゃんと食えって。今日体育あるとか言ってたろ、持たねえぞ」
「うううっ、いただきます…!」
さすがに残飯をなるべく出さないためにも、従業員として義務があるような気もした。
フォークとスプーンを出されたが、私はそんなもの見向きもしないで割り箸をパキッと割る。
「それと三部はなるべくやめろと言ったはずだが。日中より夜のがこっちも助かる。だから学校も朝と昼にしたらどうだ、単位も余裕なんだろ」
夜は時給も上げるぞ───という、誘惑。