孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「三部のが気の合う友達がいるから!バーのほうは週末って決めてるの」
「……帰り道だけは気をつけるんだぞ」
「うん」
はあ…と、心配そうにため息を吐きつつどこか表情を和らげた店長。
だんだん誰かに似てきているとでも思っているんだろう。
と、カランカランとドアが賑やかに開いた。
「おっつかれーっ!定時前に上がれるなんてほんっとラッキーだったよ~」
すこし前に「そっちのほうが似合ってる」と店長に言われてから、平日は仕事終わりのままスーツ姿でやって来るようになった玖未さん。
「お疲れ。いつものでいいか」
「うわーん!シュウさん今日も昨日も明日も愛してるっ!…って、乃々それめちゃくちゃ美味しそうじゃん!あたしにもひとくち~」
「あっ、じゃあぜんぶあげる!やばい35分の電車には乗らなくちゃ遅刻するっ、行ってきまーす!」
店長の「あいつ…」の目を、気をつけなよ~という玖未さんの言葉にフォローされながら送られる。
駅へ向かって当たり前のように電車に乗って、私はひとつの共学高校へ。