孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




財前さんはそれをしてしまったのだ。

海真くんは、しなかったね。
この場所で私が襲われそうになったとき。


これ以上やると殺してしまうと分かっていながらも、それほど恨みながらも、彼は財前さんにトドメはささなかった。



『しかしあなたは止めないで突き刺したのです……!!たとえどんなに恨んでいたとしても…!!そこにどんな理由があろうと!!』



岡林さんはここまで声を上げることができたんだと、驚いた。

完璧な執事と言っても過言ではない彼が、主へと訴えかけるように涙を流してまでも。



『それだけは人として絶対にやってはいけなかったのですッッ!!
ここまで来たならあなたが手にするお金など、ただの紙切れでしかないということがまだ分かりませんか……!!』


『ッ…、』


『……この場所であなたが乃々さまと海真さまに薬を飲ませたときから、私はずっと決めておりました。私も自主をいたします。今回のことだけでなく……財前家が隠しつづけてきた罪を、共に受けます』



ひれ伏すように泣き出した財前さんは『だったら教えてくれ』と、私に聞いてきた。



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