孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




『外見は内面のいちばん外側でもあるんだよ、財前さん』


『…………、』


『…1度だけ、考えたことがあるの。もしあなたが何に対しても一生懸命で、お金ではない大切なものを見ることができる海真くんと同じ目を持っていたとしたなら……、
そんなあなたが私と向き合ってくれていたなら。この婚約を前向きに思えた私もいたのかもしれない、って』



どこかで変わった未来があったのかもしれない。

私も自殺なんて考えることもしないで、財前さんも自分に自信を持って笑っていられる、そんな未来が。



『…財前さん、海真くんは生きています』


『っ!!死んだんじゃ…ないのか……?僕は人殺しだ、僕のせいで……っ』


『生きてるよ。…目は醒めないけれど、一生懸命……生きてるの』



その涙が流せるならば、生まれ変わることができる希望は残っている。



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