孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「つぎ数学でしょ…?ほんとごめんなんだけどさ、今日までの課題で3問くらい分からないとこあって……あとで見せてくれたり…?」
「んー、どうしよっかな」
「おねがいっ!このとーりっ!!」
パチンッと、顔の前で手を合わせてまで願ってくる紗彩(さあや)。
………あ、またピアス増えてる。
そんな姿をもう少し眺めていたくて悩むふり。
「…ふふ。いいよ」
「あっりがと!今度新作のカフェラテでも奢るよのっちゃん!!」
「それ高くて甘いだけらしいから、だったらコンビニのアイスのほうがいいかも」
「おけおけ!紗彩ちゃんはお友達になんでも奢っちゃうっ」
「あ~、私、そういうお金で解決みたいなのすごくイヤ」
「ええ~!のっちゃん激ムズっ!でもそーいうところが好きぃ~!!」
課題を見せ合うだなんて、もし前の学校でしていたら先生に怒られるどころじゃない。
軽蔑されて一瞬にして全校生徒に広まることだ。