孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「1度失敗してるから、再婚なんか考えてもなかった。だが……感化されたんだろう俺も」
「…私たちに…?」
「他に誰がいる」
どんな海真くんだとしてもそばにいる。
ずっと目が醒めなくとも、醒めて私のことを忘れちゃっていたとしても、身体のどこかが不自由になっていたとしても。
そんなの私が海真くんから離れる理由になんかならないよ───そう、店長や玖未さんにも私は伝えていた。
「ちゃんとメシ、いつも作ってるのか」
「うーん、最近はファストフードとコンビニになっちゃってるかも。もうちょっとで全メニューコンプリートしちゃう」
「太るぞ。身体にも悪い」
「大丈夫!作れるときは作ってるから!買い物は激安スーパーのセール日に行くって決めててね、たまご10コ入りで税込118円なの。あれ見ちゃったらもう他で買えないもん」
「…ふっ。元お嬢様だとは思えないほどの倹約家だな」
思い出ばかりの街と家で、私は強く楽しく切なく生きている。
切ない部分は、隣に海真くんがいないから。