孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
私は今日もたくさんたくさん笑顔を向けて、手を握って、たくさんたくさん名前を呼ぶ。
目を閉じたままの君に聞こえるように、たくさんたくさん。
耳は聞こえているんだって。
意識はなくても、ちゃんと聞こえているって。
「それでふたりのお家、いっぱい探してくれたよね。…でも私はね?海真くんと一緒にいられるなら……本当はどこでも良かったんだ」
でも、うれしかったの。
そこまで私との未来を考えてくれる海真くんが。
いつか、いつかふたりで予定していたあの家に住むことができたなら。
それもそれで幸せだなって思うんだ。
「これ、行けなかった遊園地とホテルのチケットだよ。まだ……持ってるの。…って、この前も見せたね」
これは私にとってお守りみたいなもの。
期限が過ぎて意味のないものになってしまったとても、私にとってはおばあちゃんになっても意味があるものだ。