孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




「海真くん…、私は海真くんを置いてひとりでしわくちゃになんか………なれないんだよ」



ネックレスにしてある指輪。
左手の薬指、サイズはぴったりだった。

太陽の光と月の光のどちらに照らされるかによって色を変える、ダイヤモンド。


きれいだね、すごく。



「いつかぜったい…、私の指にはめてね、海真くん」



そんな私たちを見つめていた看護師さんから、静かに鼻をすすった音が聞こえる。



「…ノクターン 第2番、流そっか。これは私たちの曲だもんね」



本当は聴くことが怖かった。
今まで唯一避けていた曲だ。

でも今日はすごく天気がいいから、聴こう。


なんとなくね、穏やかに目を閉じる海真くんが「聴きたい」って言ってくれてるような気がしたんだ。



「あれ…、ちょっと震えちゃってうまく操作できない……、へへ」



ちゃんとプレイリストにまとめてあるんだよ。

食生活と私生活はお嬢様のときに比べたら大雑把になってしまったかもしれないけど、私はあのときからそこまで変わってない。


海真くんを大好きな気持ちは、なにがあろうと変わらない。



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